通貨の価格が変動するときには何か要因があると考えるのが適切です。
基本的には為替取引による需要と供給の関係によって通貨の価格は決まっていますが、大量に買われたり売られたりするときには背景があるのが一般的です。
この記事ではバイナリーオプションでよく用いられているアメリカドル、ユーロ、イギリスポンド、オーストラリアドルに着目して、通貨の価格が変動する要因として代表的なものを紹介します。
目次
ファンダメンタルズ分析の重要性
為替レートの変動は通貨価値の相対的価値の動きによる影響が大きいことが知られています。
機関投資家は為替取引によって利益を生み出そうとしているのが基本で、割安な通貨を割高な通貨で購入して保持することにより資産価値を高めています。
このような通貨価値の変動を引き起こしているのは社会情勢や経済動向、金融政策などの様々な要因です。
為替取引ではテクニカル分析によって相場の動きを読むのが主流になっていますが、テクニカル分析と合わせて重視する必要があるのがファンダメンタルズ分析です。
ファンダメンタルズ分析は相場の変動要因となっている社会の変化を読み解く分析手法です。
特に長期的な通貨価値の変動を予測するのに有効と言われている方法ですが、大きな変動要因が発生したときには短期的な変化も生み出します。
ファンダメンタルズ分析で重視されているのは経済指標、金融政策、要人発言の三つです。
主に法定通貨としている国での経済指標の発表や金融政策の実施、関連国の要人発言が相場を動かしています。
ただ、政治や経済において他国への影響力がある国での動きが世界的に通貨価値を変動させる場合もあります。
特に為替取引では基軸通貨のアメリカドルの価値変動が大きな意味を持つため、アメリカの経済状況の変化や社会の動向は目を離すことができません。
バイナリーオプションでもファンダメンタルズ分析を疎かにしてしまうと、チャート上からは予測できない急激な値動きによって失敗するリスクがあります。
ただ、ファンダメンタルズ分析で何をしたら良いのかがわからないという悩みはよくあります。
個々の通貨について何が相場を動かす大きな要因になるのかがわかっていないと情報の集めようもありません。
以下では為替の投資家なら誰もがチェックしている変動要因について概説します。
アメリカドルの変動要因
通貨の変動要因を考える上で外せないのアメリカドルです。
世界の基軸通貨と呼ばれていて、為替取引だけでなくビジネスなどでも共通通貨として利用されています。
最も取引量が多い通貨なのでバイナリーオプションでは取引しやすいというメリットもありますが、アメリカドルの価格変動はほとんどの為替取引に影響を及ぼすので注意が必要です。
◆雇用統計(失業率、非農業部門雇用者数)
◆国内総生産(GDP)
◆消費者物価指数(CPI)
◆卸売物価指数(PPI)
◆ISM製造業景況感指数
変動要因として最もよく知られているのは雇用統計です。
アメリカの経済は消費者によって動かされている部分が大きいため、消費者の雇用状況の変化は景気を反映していると捉えられています。
毎月の初めの金曜日に発表される雇用統計では失業率や非農業部門雇用者数がよく着目されていて、大きな変動があったときにはドルの売買が活発になります。
国内総生産、消費者物価指数や卸売物価指数、ISM製造業景況感指数も重要な経済指標です。
発表時期をリストアップしておいてすぐに対応できるように準備しておきましょう。
主な変動要因 | 発表時期 |
雇用統計 | 毎月初めの金曜日 |
国内総生産 | 四半期(3ヶ月)ごと |
消費者物価指数 | 毎月15日前後 |
卸売物価指数 | 毎月15日前後の木・金曜日 |
ISM製造業景況感指数 | 翌月第1営業日 |
アメリカドルは「有事のドル買い」と昔からよく言われていて、戦争や疫災などが発生して世界的な不安が広がるとドルが買われる傾向があります。
世界の基軸通貨なので、世界経済が揺らぐようなことが起こったとしてもアメリカドルの価値は維持されるのではないかと期待されているのです。
ただ、アメリカが国家として危ぶまれるような事態では逆にドルが売られることになるので注意が必要です。
アメリカの同時多発テロが起こった際などにはドル売りが活発に行われたという記録もあります。
近年では有事の円買いも行われるようになってきたことから、特にドル円の取引ではどちらの買いが優先するかを見極めるのが重要です。
また、アメリカドルでは市場介入による変動もしばしば起こります。
各国の中央銀行が直接市場に参加してドル買いやドル売りをするのが特徴で、自国通貨の市場価値をコントロールするために行います。
このような介入による影響を受けやすいのはアメリカドルの特徴なので、先進国を中心として市場介入の可能性には常にアンテナを張っておきましょう。
ユーロの変動要因
アメリカドルに続いて流通している通貨としてユーロがあります。
ヨーロッパ連合に加盟している国で通用する通貨で、イギリスが脱退してからも主要通貨の1つとして注目を浴び続けています。
ユーロも取引量が多いのでバイナリーオプションでよく取引に使われていますが、ユーロの通貨価値に大きな影響を与える指標は多いので注意が必要です。
EUの加盟国の政治や経済の状況がユーロには大きく響きます。
ドイツのような主要国の影響力は特に大きく、GDPだけでなくIFO景況感指数やZEW景況感指数、CPIやPPIの変化が大きな価値変動を引き起こすことが少なくありません。
フランスもEUの中心国の1つとして影響力を持っているので、経済指標は一通り確認しておくのが無難です!
ユーロは全体で失業率やHICP、PPI、小売売上高なども集計して発表しているので確認するようにしましょう。
ユーロ圏全体の失業率の動きはユーロの価値に大きな影響を及ぼします。
毎月発表されるので、発表される時間帯の取引の仕方をよく考えておくのが大切です。
基本的にはEUの動向と加盟国の動きを同時に見て、ヨーロッパ全体の経済状況を把握することがファンダメンタルズ分析には欠かせません。
ユーロではECBによる金融政策についても注意が必要で、各国の政治や財政に合わせて大きな動きを起こすことがしばしばあります。
ユーロ経済圏ではありませんが、イギリスやスイスとの貿易も多いため、イギリスやスイスの経済状況の影響も受ける傾向もあるのは念頭に置いておきましょう。
ユーロで取引をするときには大きな動きだけを見ていれば大丈夫ですが、ロンドン市場のあるイギリスは以下のイギリスポンドの変動要因で紹介する主要な経済指標を見ておくのが安全策です。
イギリスポンドの変動要因
ユーロ圏にありながらも唯一の島国として比較的独立した地位を築いてきたイギリスではポンドが利用されています。
EUを脱退してからはさらに独立感が強まっているものの、ユーロ圏の影響が大きいので注意が必要です。
EUの経済状況が低迷するとイギリス経済にも動揺が起こることが多いため、イギリスポンドの価値も変わることがよくあります。
EUから脱退したことで政治的なつながりは薄れましたが、経済的には強いつながりがあると考えて経済指標のチェックはEU加盟国まで見ておくことが大切です。
イギリス国内で発表される経済指標でイギリスポンドの価値変動の要因になりやすいものもたくさんあります。
GDPや失業率はもちろんですが、イングランド銀行によるインフレレポートが大きな影響を与えるので注意しましょう。
年に四回発表されるイギリスの景気や物価の将来予想がインフレレポートで、金融政策の予測につながる重要な発表です。
また、政策金利の発表も毎月行われていて、大きな動きが起こることも珍しくありません。
この他にもIIP鉱工業生産指数やPPIについても経済変動を見極める重要な指標になります。
金融政策の発表などに比べると影響力は大きいですが、発表の時刻の前後にノイズ的な値動きが起こることも多いのでエントリーを控えた方が良いでしょう。
オーストラリアドルの変動要因
オーストラリアドルはニューヨーク市場、ロンドン市場、東京市場の三大市場とは別の時間帯に経済活動が活発になるオーストラリアの通貨で、バイナリーオプションでは注目している人が比較的多くなっています。
為替取引でも高金利の通貨という点からよく買われている通貨です。
その影響で政策金利によって金利が動くことにより売買が大きく行われることが多いので注意しなければなりません。
オーストラリアでは政策金利の発表が毎月第1火曜日に行われているので、発表前後は取引の仕方に十分に注意しましょう。
オーストラリアは資源国なので資源相場にも目を向けておくことが必要です。
石炭やボーキサイト、原油や金などの産出をしていて、オーストラリア経済では主要な地位を占めています。
そのため、資源の価格が上がるとオーストラリアドルの価値も上昇するのが通例です。
同じ資源国での産出量や輸出量が変わったことによって資源価格が動き、オーストラリアドル価値変動を引き起こすこともあるので、他国の動向にも気を付けましょう。
オーストラリアでも経済指標による通貨価値の変化が起こります。
他国と同様にGDPや失業率、CPIやPMIを確認しておくのが重要です。
また、ウェストバック消費者信頼感指数もオーストラリア独自の景況感指数で、毎月上旬に発表されます。
消費者の考える景気の見通しがわかる指標という点でよく着目されているので気にかけておきましょう。
ウェストバック消費者信頼感指数は、ウェストバック銀行とメルボルン研究所が月次で公表している消費者マインド指数のことで、100を基準として上回ると良好レンジとされています。
経済指標の発表と通貨価値の関係
このように見てみると各国の通貨価値には経済指標や金融政策の発表の影響が大きいことがわかるでしょう。
要人発言も多大な影響力を持っていますが、内容やタイミングを予測しづらい面があります。
記者会見が行われると予告があった際には、その時間の前後はトレードを避けるのが無難です。
各国の首相や大統領、中央銀行の総裁などが発言する際には経済がどちらに傾く可能性があることを口にするかによって通貨が買われるか売られるかが大きく異なります。
バイナリーオプションでは上がるか下がるかを予測することになるので、全く逆の発言があると大失敗する可能性があるのでエントリーをしないのが安全策なのです。
経済指標の発表は明らかな方向性が見えている場合にはバイナリーオプションでもエントリー可能です!
これまで重要指標について通貨ごとに紹介してきましたが、どのような内容のときに通貨の価値が上がり、どんなときに下がるのでしょうか。
基本的にはその国の経済活動が活発になっていて景気が良くなっていると通貨価値が上がります。
GDPの増加や失業率の低下、CPIやPPIの上昇といった要因で通貨の価値も上昇します。
基本的には前回発表値と比較をして考える必要があり、絶対値がいくつになっているかによって判断するものではありません。
また、GDPのように予想値が最初に発表されて、最終的に確定値が出る指標もあります。
この場合には為替への影響力が最も大きいのが予想値のことが多くなっています。
ただ、予想値と確定値が大きく離れていたときには、確定値の発表の後に市場が乱れる傾向があるので注意しましょう。
雇用統計のように民間機関が事前予想値を出す場合もあり、その予想値に基づく売買による価値変動が起こることもあります。
ファンダメンタルズ分析では予測値や予想値についても考慮して早く発表される数値ほど注意するのが大切です。
バイナリーオプションで重要なのは通貨ペアの相対価値
通貨価値が変動すると為替レートが動くのが一般的ですが、微動もしないことがあるので注意しましょう。
バイナリーオプションでは通貨価値に基づいて取引をしているのではなく、通貨ペアの相対価値によって決まる為替レートの上下動を予測して取引をしています。
つまり、注目している通貨ペアの両方の価値が同時に上がったり、下がったりしたときには為替レートは特別な変動を起こしません。
例えば、アメリカの雇用統計が発表されてアメリカ経済が好景気になったとしましょう。
それと同時に日本で要人発言があって、景気の向上が見込まれたとします。
すると、アメリカドルと円はどちらも買われる傾向が強まり、価値も向上します。
雇用統計の発表も要人発言も為替レートの変動には大きな影響を与えない結果になるのです。
このような発言が意図的に行われることもあるので注意しましょう。
まとめ
通貨価値の変動要因を理解することは為替レートの値動きを予測する上で重要です。
ファンダメンタルズ分析は変動要因を知るために欠かせない分析手法で、経済指標、金融政策、要人発言に注目するのが基本になっています。
ここではバイナリーオプションでよく用いられている四つの通貨について紹介しましたが、クロス円で取引するなら日本円の価値変動にも注目する必要があります。
価値変動に影響力がある発表が行われるタイミングをまとめておき、大きな変動が起こり得ることを念頭においてトレードの計画を立てるようにしましょう。
どちらに値動きをするかがわからないときにはむやみにエントリーするのは避け、確実性が高いときにだけ発表のタイミングのエントリーをするのが安全策です。
この基本を念頭に置いて、ファンダメンタルズ分析を有効活用していきましょう。